ジョアン・ミロ(1893-1983)は、地中海の明るい陽光に包まれた故郷スペイン、カタルーニャの風土で感性を育み、1920年代のパリにおいてシュルレアリスムなどの革新的な美術運動に出会いながら、独自の芸術を開花させていきました。また、戦後の抽象表現主義にも大きな影響を与えるなど、90年の長い生涯において20世紀美術に大きな足跡を残しました。
ミロの芸術は絵画のみならず、版画、彫刻、陶芸、タペストリー、舞台美術などさまざまな分野に広がっています。ミロが版画を始めたのは比較的遅く、37歳の時でした。以来、より多くの人が身近に楽しむことができる複数性や制作過程における予期せぬ効果、そして刷り師との共同作業のなかから生まれる新たな発見に魅了され、晩年に至るまで精力的に版画制作を続けました。親しい詩人や文筆家と組んだいくつもの挿絵を含め、ミロが制作した版画の総数は、1000点を超え、彼の芸術のなかで重要な位置を占めています。
本展では、ミロが本格的に版画を始めて間もない頃の作品から、最晩年までの版画92点を展示します。版画ならではの多様な表現や鮮やかな色彩の中に繰り広げられる夢と遊び、そして造形に対するミロの飽くなき冒険の世界をお楽しみください。