『白雪姫』『赤ずきん』『灰かぶり』『ヘンゼルとグレーテル』…。グリム童話は世界でもっとも有名な童話といえるでしょう。本展は、ドイツ国外で初めて公開されるドイツ・カッセルのグリム兄弟博物館所蔵の260点の貴重な資料により、グリム童話の世界を紹介するものです。日記や手紙などの自筆資料や初版本などでグリム兄弟の生涯をたどるとともに19世紀当初から現代にいたる古今のグリム童話の挿絵を展示し、今でも世界中の人々に愛されつづけるグリム童話の魅力にせまります。
童話の恩人ともいうべきグリム兄弟(兄ヤーコプ1785-1863、弟ヴィルヘルム1786-1859)は、ドイツのハーナウに生まれました。優れた学者であったふたりは、中世ドイツの風俗、伝承文学に興味をもち、古い民話の収集にとりかかります。1812年に第1巻が刊行された『子どもと家庭のメルヒェン集』は大きな反響をよび、彼らはさらに物語の採集と研究をすすめ、200話からなるグリム童話集を完成させます。
当初『子どもと家庭のメルヒェン集』には挿絵がありませんでしたが、挿絵をつけた英語版の成功にならい、兄弟の末弟で画家のルートヴィヒ・エーミール・グリムが挿絵を描きました。また、19世紀から印刷技術を発達したことの影響を受けて、さまざまな挿絵入りのグリム童話集が出版され、とくに19世紀末からは、著名な画家たちがこぞってメルヒェンを題材にし、絵本の制作に携わりました。現在でもグリム童話は、さまざまな芸術家たちにインスピレーションを提供しつづけ、また70を超える言語に翻訳され、国境を超えて親しまれています。
本展覧会で展示されるさまざまな国や時代の資料により、童話の原点というべきグリム童話の本来の姿がよみがえり、新たな魅力が発見されることでしょう。グリム童話に初めて出会う子どもから、久しぶりの再会となる大人まで、すべての方にお楽しみいただける展覧会です。