≪朽ちる家 ― 落石計画(おちいしけいかく)より―≫
すべてのものは朽ちてゆく。旧落石無線送信所跡で毎夏、『銅版の茶室』として積み上げられた銅版画(石膏キューブ)は年間を通して落石岬の過酷な気象条件に晒され、つくるそばから朽ちはじめ風化が始まる。その現実を受け入れながら、さらに石膏キューブを積み上げる。つくる、くちる、つくる、の繰り返し。強酸性の腐食液によって強制的に銅を朽ちさせながら絵をつくっていく銅版画のプロセス同様、この地では塩分を含んだ深い霧に包まれながらすべてのものが等しく、加速度的に朽ちてゆくのである。風化した銅版画の上に、さらに積み上げ続けられる新たな銅版画。本展は朽ちることの象徴としての銅版画をテーマに、2012年に開催された『落石計画第5期 銅版画試論―つくること、ゆだねること― 』の続編として位置づけ、現場でつくりながら、あらためてふたりにとっての銅版画の在り方を問うものである。
(落石計画第11期 銅版画試論Ⅱ -つくる、くちる、つくる、-ステートメントより抜粋)