そもそも鎌倉の禅は、建長寺開山の蘭渓道隆から始まったのです。中国の禅寺と同様の規則や様式、運営方法を取り入れて、建長寺を禅宗専門の道場としたことによります。新しく伝わった禅を学ぶため各地から僧が集まり、禅宗が日本仏教の中で大きな流れになりました。その後も日本と中国の禅僧が頻繁に往来したので、鎌倉と中国との距離は接近し、船で運ばれた書画、磁器、漆器のほか、くつろいだ姿の観音像や異彩を放つ伽藍神像など道教と仏教が混ざり合って生まれた独特の尊像が堂内に置かれました。建長寺、円覚寺には中国の寺院と変わらない風景画広がっていたことでしょう。保守的な京都の禅宗寺院よりも多くのものを受容した鎌倉の禅刹。枯淡なものというイメージを改める、多彩な禅の文化をご覧ください。