“超絶”だけでは見えない明治がここにある。
明治初年は「博覧会の時代」といわれるほど、全国各地で博覧会が開催され、明治政府も博覧会を通じて日本の近代化の実現を目指しました。博覧会は各地域の技術や知識の交流・競合の場であり、出品物は地域の自慢の品として、その特質を強く反映しています。つまり博覧会ごとの出品資料を見ていくことで、その地域の近代化の歩みをたどっていくことができるといえます。
本展では博覧会をとおして、三河地域の近代化の歴史をたどります。山野河海に恵まれた三河は古くから多様な産業が発達し、明治期における近代化の大きな原動力となっています。一方で臥雲辰致のガラ紡が、この地域の紡績業の近代化に多大な功績を残したように、博覧会の技術交流が三河の産業発展に影響を与えました。
また博覧会出品物からは三河の地域性もうかがえます。前時代の象徴である家康に関する資料は、当初出品が避けられていました。それが時が経つに連れて、逆に主催者から出品が要請されるようになっています。日本の美術は明治になって根本から変容していきますが、渡辺崋山の流れを汲む画風は、この地域に脈々と受け継がれていきました。
江戸から明治、近世から近代に変わる激動の時代、そこに挑んだ人々の心をぜひ感じていただけたら幸いです。