いわきのアートシーンに新しい風を運んできた「ニューアートシーン・イン・いわき」シリーズ。今回は、大久保草子をとりあげます。木版画の繊細な描線を重ねて力強く豊穣な画面を創りだす大久保草子。小さな窓で仕切られた墨と和紙の素朴な世界に描かれた動物や風景からは、現代人が忘れていた言葉にならない記憶に導かれます。墨一色で現された画面は、神話にも似た懐かしさで、直接見る者の心に優しく語りかけます。小さな窓で仕切られた木版画を創作の舞台とする大久保草子が、本展においてロビーという開かれた空間を会場とすることにより、静謐な版の表現に両手を広げた大きなふり幅を加え、新たな表現の境地を開くことでしょう。