本展は、ベルリンを拠点に活躍するデザイナー、濱田明日香が手がけるファッションレーベル「THERIACA(テリアカ)」初の大規模展覧会です。
「THERIACA」は、丸や四角といった幾何学的な形状を服にしたコレクションを発表するなど、ユニークなパターンとカッティングの美しさで注目を集めてきました。本展では、衣服のさまざまなあり方を探求し日々実験を重ねて来た濱田が、「ひと」から形をとって服を作るのではなく、「もの」の形と向き合い、服に落とし込んだ新作や、サイズやシルエットなど衣服の基本的な要素を濱田独自の視点で捉え直した作品を一堂に展示します。
ソファやトイレットペーパーといった、私たちにとって身近な「もの」の形が、その縮尺を変えられ、柔らかい布に置き換えられて衣服へと姿を変えるとき、そこには原型* に沿って作った服にはないボリュームや布の重なりがあらわれます。私たちの知る「もの」でなく、また見慣れた服からも距離のある濱田の作品は、不思議な雰囲気を放ち、洗練されていながらどこかユーモラスでもあります。それらは服という言葉イメージできる範囲を押し広げ、楽しさを提供しながら私たちに新しい服のあり方を提案しているようです。
本展は、原型ではない「もの」から形をとる衣服の制作を通し、衣服の形と体の形の関係をさぐるワークショップに連動するものとして企画されました。本展が、濱田の実験精神あふれる作品に触れ、服の可能性やその面白さに出会う機会となれば幸いです。
*一般的に服を作るための土台となる型