60年代からほぼ半世紀、高浦浩は抽象画に徹して制作してきた画家である。どこにも所属することなく、一途に思うことを思うように描くことを信念として、自由というものの意義を噛みしめて生きた画家だった。主にシロタ画廊での個展を続け、それら独創の世界を伸び伸びと発表してきた。今回で28回展を数えるが、残念ながら今回展には個展の主はいない。2016年の暮れにこの世とお別れをしたのだ。彼はクラシック音楽をこよなく愛し、ドイツに親しみ、ゲーテに心を寄せていた。残された作品には確かに音楽がいっぱいつまった感じがする。美しい旋律が見えてくる。多くの皆さんにそれを楽しんでいただきたい、と彼は願っているだろうし、学生時代からの長年の友としての私もそう願っている。(武田厚 美術評論家・多摩美術大学客員教授)