大きな袋とお腹に、にったり笑顔の布袋(ほてい)。七福神として、現代のわたしたちにもなじみ深い彼の正体は、実は中国に実在した僧侶でした。肩に布袋(ぬのぶくろ)を担ぎあちこちを歩き回り、そして、自身の末期に弥勒菩薩の化身であると語ったと伝えられています。
何ものにもとらわれずに生きた布袋に代表される「奇才」とは、奇を衒(てら)うことなく常軌を逸した言動をとり、時に世間に蔑(さげす)まれながらも真理を求めた者たちであり、古くから人々の憧憬(しょうけい)の対象でした。
絵画や工芸作品には、布袋のほか達磨(だるま)や寒山(かんざん)・拾得(じっとく)など、中国の様々な奇才が採り上げられ、強烈な個性を放った彼らの多彩な物語をたどることができます。また日本でも西行(さいぎょう)や一休宗純(いっきゅうそうじゅん)など異彩を放った人々が、奇抜な物語が遺しています。
本展では、徳川美術館に伝わる絵画作品や工芸品から、奇才たちの物語を読み解き、彼らの魅惑的な世界へと誘います。