幼い頃、寝室の座敷で、松の木の彫られた「欄間」を飽かず眺めていました。こちら側から、はたまたあちら側から。その数センチの厚みに数センチ以上の世界が在ることがとても不思議で、楽しかったのです。それ以来私の心の数センチに世界ができて、いろいろなものが住み着いたようです。今回はその世界の場面場面を写しとった恰好です。最近は、作品世界の隅々まで制御する/できると思うのをやめました。整合性を気にし過ぎるのも。(要するに、「いー加減になる」ということですね。)それよりも、浮かんでくるものを一つでも多く汲み上げ、コントロールや辻褄からはみ出すものをも捨てず見てみること。「心にいつも、はみだしものが生きる数センチを。」 金井和歌子