歌麿なき後に現れた、知られざる美人画の名手
菊川英山(1787-1867)は喜多川歌麿のなき後、文化年間(1804~18)を中心に活躍した浮世絵師です。多くの絵師が歌麿風美人を描くなか、英山は洗練されたファッションに身を包んだ可憐な女性像を確立し、美人画界に新風を吹き込みました。その作品には上品な武家の姫君から、愛らしい町娘、ゴージャスな遊女まで、多様な女性たちが時に優雅に、時にポップにカラフルに描かれます。近年では知られざる存在となっていますが、こうした英山の美人画は門弟の溪斎英泉のみならず、歌川国貞や歌川国芳など、以後の絵師たちに大きな影響を与えました。幕末の美人画は、英山から始まったと言っても過言ではないでしょう。
今年、菊川英山の没後150年を迎えることを記念し、本展覧会では、初公開作品や代表作を含む版画・肉筆画の優品約200点を通して、菊川英山の画業に再び光をあてます。東京で開催される回顧展としては32年ぶりです。新しい時代の要請にこたえ、しなやかに花開いた英山美人の輝きをご堪能ください。