スイスの造形作家であり、バウハウス初期ワイマール時代の指導者のひとりでもあったヨハネス・イッテン(1888-1967)は、独自の造形理論と色彩論によって、とりわけわが国では戦後の美術教育界でよく知られています。しかし、これまでそうした理論家としての側面をも育んだ個性豊かな絵画や立体作品など、その実作品がまとまって紹介されたことはなく、そして評価の高い造形指導の内容も、実作例の成果に基づいて検証されるという機会はありませんでした。本展覧会は、スイスのヨハネス・イッテン財団が企画組織し、世界巡回展の一環として開催されるもので、東洋思想や日本をはじめ東洋美術にも強い関心を抱いていたイッテンの造形理念の一面を探る意味でも、日本での開催の期待は大きく、広い視野からイッテン芸術を再考する好機となるに違いありません。