ジョルジュ・ルオー(1871-1958)は20世紀を代表するフランスの国民的画家として、その名を知られています。パリに生まれたルオーはステンド・グラス職人の徒弟として修業を積み、その後、美術学校に入学して象徴主義の画家ギュスターヴ・モローに師事しました。そしてキリストをテーマとした作品、さらには娼婦や道化師などを、力強い筆遣いで描き続けます。次第に顕著になってくる極端な厚塗りの画面は、独特の聖性をたたえ、ステンド・グラスにも通じる素朴かつ静謐な魅力を有しています。
ルオーの作品は、戦前から美術雑誌などを通じて盛んに紹介され、当時のフランスを代表する画家として、日本でもよく知られており、多くの人々の賞賛を集めました。例えば武者小路実篤は、1936年の欧米旅行でルオー宅を訪ね、直接会って作品を1点譲り受けています。その後もルオー作品は日本の画家、蒐集家を魅了し続け、その結果現在では多くの代表的な作品が国内に所蔵されています。
本展は、世界的にも特筆すべきルオー作品のコレクションを有する出光美術館より、特別にご協力いただき、ルオーの画業を1900年代に彼自身の様式が確立されて以降、晩年に至るまでの約110点によってたどるものです。出光コレクションの油彩連作《受難(パッション)》、ルオー最大級の作品《小さな家族》などの代表作に加え、国内に所蔵されるルオーの優品を併せて展覧し、ご紹介いたします。