髙橋節郎(1914-2007)は戦前の鮮やかな色漆にはじまり、戦後のさまざまな実験的な試みを経て、1970年代には漆黒と鎗金が織りなす独自の作品世界を築き上げました。私たちは作家の青年期や壮年期の作品には変転や達成を期待する一方、晩年の作品に対しては変化よりも安定感を暗黙の裡に意識しがちです。しかし髙橋は晩年においてもなお、新たな表現に挑みながら作品を発表し続けました。
歿後10年を迎える節目にあたり、本展では宇宙三部作ともいうべき《星空円舞》《満天星花》《星空交響詩》ほか、髙橋が75歳以降に制作した代表作を中心に、一部円熟期の作品も併せた50点余を展観します。惜しまれつつ天へ還った髙橋の雄大な作品世界と自由な精神をあらためてご堪能ください。