1960年代末から1970年代初頭、森山大道は写真そのものを根底から覆すような衝撃を与え、新時代の騎手となった。1968年「挑発する」という意味をもつ『PROVOKE』誌が創刊され、第2号から森山も参加する。既成の概念を打ち破り、現実の断片を自らの眼で捕獲しようとする「プロヴォーク」の写真家たちのラディカルな問題提起を、最も体現した存在が森山だったといえる。描写の精緻さ、フレーミングの巧みさなどそれまでの常識にとらわれず、「アレ・ブレ・ボケ」といわれる荒々しい映像を提示し、「写真とは何か」という問いを鮮烈につきつけた。森山の『にっぽん劇場写真帖』『狩人』などの写真郡は、以後の写真表現を塗り替えるほどの影響力をもち、その鋭敏な感性と作品の質の高さは、今日ますます国際的な評価を高めている。
この展覧会は、国内初のまとまった森山大道展であり、国内外含めて最大規模の展覧会となる。1960年代末から1970年代初頭に焦点をあて、森山にとって最も重要なこの時期の意味を再顕彰することを主軸に置く。6つのセレクションで全体を構成し、その全貌を辿る。