浮世絵版画は多数販売された出版物で、人々が気軽に購入できるものでした。その企画から宣伝、販売までをおこなったのが版元で、浮世絵版画の売れ行きは、大衆の好みや流行を先取りし、人気絵師を採用する彼らの手腕にかかっていました喜多川歌麿や無名の東洲斎写楽を売り出した版元蔦屋重三郎は、その卓越した例といえます。
浮世絵版画をすみずみまで眺めると、絵師の落款だけでなく、屋号などを意匠化した"版元印"が摺られており、版元の役割の重要性がうかがわれます。また、検閲制度の始まった寛政期(1789~1801)以降に現れる"改印"は、作品の刊行時期を知る情報源ともなっています。
このたびの展覧会では、これら画中の小さな情報に注目し、初期から寛政期以降、幕末、そして明治時代までの浮世絵版画を通して、版元と出版の歴史を紹介します。さらに、版元の店先を描いた作品から、販売方法やそこに並ぶ売れ筋商品を探ります。出版という、ひと味違った視点で浮世絵版画をお楽しみください。