声は、過去を想像させ、時間を遡らせてくれる。2017年6月に舞台美術を務めた演劇で、テレサ・ハッキョン・チャというアーティストが書いた「ディクテ」というテクストに出会った。韓国に生まれ、アメリカに逃れ生きた彼女は、母国の歴史や複数の言語、声を生きる中で変容する身体、アイデンティティの探求を、書物という形で残した。「ディクテ」に触れることで、ルーツを探る、時間を遡るという行為に心惹かれた。過去を見つめると、現在をとりまく環境、そして自身が、より鮮明に見えてくる。タイムカプセルを開き、また閉じたあとに見る景色は、以前見ていた景色よりも、奥行きが生まれている。タイムカプセルに閉じ込めるように、声を保存する。