狂気のバキューム[真空]
クラクフ美術アカデミー[1949-1954年]を卒業後、ワルシャワに移り住み、1950年代と1960年代初期、一瞬にして魅了するぐらいインパクトがあり、しかもクオリティが高い作品の数々を制作していたチェシレヴィチ[1930-1996年]。ポーランドポスター作家の中でもヘンリク・トマシェフスキ[1914-2005年]等と共に傑出した作家だったことに誰も異を挟むことはない。チェシレヴィチの研ぎ澄まされた感性が昇華した代表的な作品が、1963年にフランスに渡って10年も経過していない時期に制作されたシルクスクリーン作品〈ZOOM1〉[1971年]、〈ZOOM2〉[1971年]。全体を左右両側から押し込んで中心部に消失されていく、線対称な図形[シンメトリー]の手法であり、狂気のバキュームとも評せるような作品。また革新性溢れた狂気漂う三冊の雑誌『KAMIKAZE』[1976年、1991年、1995年]。その後取り組んだのがフォトモンタージュで、自身が「重要な浄化プロセス」と語っているように、自分だけが寛げる華美な妖艶さが入り混じったイマージュの王国ではなかったか。