いつも「言いたいこと」に満ちあふれ、何かを書かずにはいられなかった実篤は、明治 43(1910)年に同人雑誌『白樺』を創刊して以来、ほぼ切れ目なく主宰雑誌を持ち、出版依頼が途切れれば自ら主体となって出版社を興してでも執筆を続けました。
『白樺』は全160号、順調に発行し続けられたかのようにみえますが、内実はどうだったのでしょうか。今回の展覧会では、発行所や印刷所・製版所など、あまり注目されることの少ない「出版の裏方・裏事情」にもスポットを当てます。
また、2017年は、実篤が昭和2(1927)年に雑誌『大調和』を創刊して90周年目に当たります。雑誌をよりどころにユニークな公募展を生み出した『大調和』。生涯を通じて幅広い交友を持った実篤の、人脈の源泉の一つはここに見いだせると言えるでしょう。
そのほか、実篤の発案で作られた日本で最初の文庫本「村の本」や、自作を振り返る機会ともなった全集の刊行などを取り上げ、絶え間なく続いた実篤の出版活動をたどります。