丹阿弥丹波子(たんあみ・にわこ)は、1960 年頃から50 年以上にわたりメゾチントという技法を用いて、野に咲く草花、野菜、日常的に使うグラスなど、身近にあるものをモチーフにした作品を数多く発表しています。静謐な空気を漂わせる一連の作品は、見る者に目の前にない色を感じさせる不思議な力を持ち、描かれたモチーフは、漆黒の闇を思わせるモノクロームの画面の中で、光を纏っているかのように浮かびあがります。作品制作にあたり、「常に心を平静に保とうとするも、自ずと感情の揺らぎが刻みこまれてしまう」という作家の言葉の通り、草花の時々の表情、季節の陽の光や風、自身におこる日々の出来事まで、様々な要素が彫り込まれ、日記のように綴られてきました。
本展は、約100 点のメゾチント作品に加え、これまであまり紹介されることのなかった初期のエッチング作品なども併せて展示し、作家の画業を辿る本格的な回顧展となります。無限の色彩とストーリーにあふれる丹阿弥丹波子の世界“時のきらめき” をご覧下さい。