日本からフランスに渡り、「狂乱の時代」の舞台となった1920年代のパリで、「素晴らしき乳白色の肌」と称された独自の画風と、オカッパ頭にロイドメガネという独特の風貌で一躍時代の寵児となったレオナール・フジタ(藤田嗣治 1886-1968)は、ヨーロッパ近代の美術の歴史において最も成功した日本人芸術家と言えるでしょう。
フジタは、風景画や戦争画、壁画や挿絵本など、生涯を通じて多岐にわたるジャンルにその才能を発揮しましたが、その中でも美しいポーズの職業モデルや注文による肖像画など彼の画業の中心をなすのは「人物」の表現でした。本展では、生涯に寄り添った5人の妻をはじめ家族や親しい友人たちなど、モデルに注ぐフジタのまなざしから、波乱に満ちた画家の生涯と芸術にアプローチしようとするものです。
世界的な画家として一世を風靡しながら、日本へのやりきれない思いを残したまま異郷の地で生涯を閉じた作家の人生を作品に描かれたモデルたちを通して浮かび上がらせ、人物という主題に取り組んだレオナール・フジタの芸術世界をご堪能下さい。