篠田桃紅氏(1913年-)は書家であり、また「墨象(ぼくしょう)」と呼ばれる墨の色と線による抽象画によって国際的な評価を受ける芸術家です。幼年時に手ほどきを受けて以来、ほぼ独学で書を学んだ篠田氏は、1956年からの二年間を単身ニューヨークで過ごし、当時先端の美術に刺激を受けつつ、墨による表現を広げていきます。瑞々しく、潤いを感じさせる淡墨から、濃墨の力強い墨、鮮やかな朱や金銀泥など、篠田氏の引く線は豊かな表情を見せ、紙の上に無限の響きを奏でます。日々の心象や思いを筆に託し生み出される作品は、今日まで半世紀を超えて多くの人の心を捉えてきました。
当館は篠田氏の作品を常設展示する所縁ある美術館として、2013年に百寿を記念する展覧会を開催いたしましたが、その後104歳を迎える現在も氏は旺盛に制作を続けておられます。本展では旧作の絵画や書、リトグラフに最新作を加え、篠田桃紅の世界をご紹介いたします。