躍動するいのちを描く
「子どもの肢体の魅力はかぎりない」と語ったちひろは、躍動感あふれる子どもの姿を、その作品のなかにいきいきと描き出しています。32歳のときに息子をもうけてからは、日々成長していくわが子やその友だちの姿を日常的にスケッチに書き留め、どのような格好もモデルなしで描くことができると語るまでになります。ちひろは、母親としての愛情と、画家としての卓越したデッサン力によって、子どもたちのあらゆる姿を画面に定着することに成功した稀有な画家でした。動きをとらえることは、生命そのものといえる子どもの本質を描くことにもつながります。本展では、初期のスケッチや育児書のカット、教科書、絵本『となりにきたこ』や『ぽちのきたうみ』などを展示し、ちひろが描く子どもの動きの表現に注目します。