正月、神社・寺院はもとより名もなき人々の家々でも、さまざまな祝い事が行なわれるのは今も昔も変わりありません。江戸時代の初めに作られた『日次紀事(ひなみきじ)』という歳時記を見ると、特に京都では実に多種多彩な正月行事がそこかしこで行なわれていたことに驚かされます。
もちろんなかにはすでに姿を消して久しい行事も少なくありませんが、昔から正月がいかに厳粛で活気に満ちた月であったかがよくわかります。
本年は年末年始にかけて開館するにあたり、それらかつて私たちの正月を彩っていた数多くの美術品のなかからいくつかのものを選び出し、「新春の寿」と題して展示することとしました。
「東福寺修正看経榜」(重要文化財、東福寺蔵)は、南北朝時代の禅寺での修正会の式次第を記したものです。また、源琦筆「松鶴梅亀図」はいずこかの屋敷の一室を正月ごとに飾っていた屏風に違いありません。
時代を越えて、新たな年の健やかなることを祈り続けた人々のおごそかな心持ちを鑑賞して頂ければ幸いです。