一九四五年、入江泰吉は大阪大空襲に遭い自宅兼店が焼失、故郷奈良へ戻ってきました。
同年十一月、疎開先から戻る東大寺法華堂の仏像を目撃し、
米軍に接収される噂を耳にし「せめて写真に記録しよう」と撮影を思い立ちました。
以来、仏像、風景、伝統行事と活動の場を広げてきました。
大和路を撮り始めて十数年後、文芸評論家の小林秀雄の勧めにより、
入江初の本格的な写真集を出版することになったのが、
この『大和路』(東京創元社/一九五八年)でした。入江五十二歳の時でした。
この写真集を出版することによって生涯大和路を撮ろうと覚悟を決めたのです。
今回は、入江の大和路撮影の原点とも言える写真集から約四十点を紹介します。