『万葉集』の時代から、富士山や吉野などの名所は憧憬の対象であり、またすぐれた歌を生むイメージの宝庫でもありました。繰り返し歌のなかに登場する土地の名は、やがてその土地を詠んだ名歌が持つ、固有の情緒を帯びてきます。これが「歌枕」です。平安時代以降、歌人たちは歌枕の背後にあるイメージを援用し、豊穣な和歌の文化を形成していきました。その世界は古筆や絵画、工芸意匠に広がりを見せ、表現をはるかに奥深いものにしています。本展では、五島美術館・大東急記念文庫の収蔵品の中から、歌枕を描いた絵画や工芸品のほか、歌仙(古今のすぐれた歌人)の肖像画「歌仙絵」、平安・鎌倉時代の「古筆」など名品約60点を展示し、和歌の文化におけるイメージの形成と創作の源泉をたどります。会期中、一部展示替(巻替・頁替を含む)があります。
国宝「源氏物語絵巻 鈴虫一・鈴虫二・夕霧・御法」を4月29日[土・祝]から5月7日[日]まで特別展示。