幸福や繁栄など縁起のよいことを「吉祥」と呼び、その象徴となる動植物等は、古くから絵画に描かれたり工芸品の意匠とされたりするなど、多くの作品に表現されてきました。これら吉祥を表した絵画や工芸品は、繁栄、健康、長寿、成功などを祈念し、現在でもお正月や七五三、結婚式など様々な行事や祝事で用いられています。その代表ともいえる松竹梅ですが、厳しい寒中に常緑を保つ「松」は不老不死を、しなやかで強い生命力をもつ「竹」は子どもの健やかな成長を、春の先駆けとして美しい花を咲かせる「梅」は清廉潔白を象徴しています。また、牡丹は富貴、桃は長寿を象徴するものとされて花鳥画に好んで描かれました。さらに、不老長寿を意味する蓬莱山や富士山、理想郷である桃源郷などは招福の象徴とされています。
本展覧会では、明治から平成にかけて描かれた日本画や一橋徳川家伝来の染織、板谷波山の陶磁器に表現された多彩な吉祥の芸術を紹介します。