1953年生まれのクロード・レヴェックは、フランスを代表するダニエル・ビュレンヌやクリスチャン・ボルタンスキーの次世代のアーティストとして、現在、注目されているひとりです。
本展は、日本では初めての大規模な個展で、現代美術ギャラリーの空間にあわせた新作で構成されます。レヴェックは、80年代から自己の記憶に根ざした写真や光を使ったノスタルジックな作品を制作し、また、ネオンや金属の家具、鎖のような工業製品や、日用雑貨を用いながら、ポップな気楽さと暴力的な要素が一体となったインスタレーションを発表してきました。レヴェックの作品は、パンク・ロックやヒップ・ポップなどの音楽文化からの影響も顕著であるといえます。近年は、音、光、霧などを駆使した五感を刺激する抽象的なインスタレーションへと移行し、鑑賞者が身体全体で体験するような空間を作品化しています。
例えば、光を遮断した真っ暗な部屋の中に聞き慣れた歌が流れている作品では、来館者は目では何も見ることができず、部屋の中を手探りで進むことになり、聴覚が研ぎ澄まされ、身体感覚が徐々に開いていく自分と向き合うことになります。レヴェックにとって光や音は、車のヘッドライトや街の証明、ネオン、ポップな曲やノイズといったように日常生活から取り出された身近な素材なのです。日常のつながりと彼自身の記憶を再構築しながらも、レヴェックの独特の視点は非日常的な空間をつくりだします。本展では、ネオン、ブラックライト、映像、音等を使ってギャラリー全体がひとつの作品となるミニマルな空間を創り出します。