これまで精神文化界の隠れた動向・遺産を見出し、再評価するような企画をお届けしてきた当館ですが、今回は満を持して、韓国現代絵画界の異才、柳根澤(ユ・グンテク、1965~)の制作の全容を世界に先駆けて紹介します。
柳は大学で学んだ東洋画の伝統を生かしつつも、早くから東洋・西洋の枠を越えて絵画全体の課題を果断に追求しつづけ、2000年ごろから内外で広範な支持と期待を集める存在となりました。日常の生活空間を凝視しながら、常識にとらわれない大胆な絵画言語を駆使することで現実を凌駕する事物関係と空間性を創出してきた彼の作品は、驚きと不思議な情趣に満ちています。
本展には初期の自画像・室内・食卓・風景・新作の図書館シリーズなど50余点の代表作に加えて、多数の卓抜なドローイング、ビデオ作品が出品されます。平凡と異常、生成と消滅、実在と幻影等の対立を魔術的に併存・転倒させてしまう柳の奔放かつ確信的な表現世界を、存分にご堪能ください。