坂東三十三観音の札所として名高い銚子の古刹・飯沼山円福寺には、第四十二世平幡照法大僧正が大正期から昭和三十年代にかけて収集した近代日本画が数多く所蔵されています。
おもに同時代の画家の作品からなるコレクションは、野田九浦(きゅうほ)や小川千甕(せんよう)らの新南画風の山水画や、小川芋銭(うせん)の俳味ある水墨画、与謝野晶子が歌を添えた長野草風の作品など、収集者の好みが反映された内容です。そのほか京都画壇の橋本関雪、洋画家の中沢弘光といった幅広い画家の作品が揃います。これらの床の間に飾るにふさわしい掛軸や手元で楽しむ画帖からは、大僧正が日々の暮らしの中で美術に親しんでいたことがうかがわれます。なかには、古画の十二神将のうちの一図を九浦が模写して補い、また、九浦や恩田得寿の観音図に大僧正が般若心経を書した作例もあり、画家たちとの交流を伝えています。
このたびの展覧会では、円福寺コレクションより選りすぐりの名品を紹介します。寺外では初公開となる近代日本画の数々をお楽しみください。