●「顔」は人間の体の中で、その人を象徴する最たるパーツであり、顔を判別することは他者を認識する最も簡単な方法です。そのため、肖像画・肖像彫刻という美術様式が生まれる以前から、あらゆる表現において「顔」は重要な意味をもつモチーフでした。本展では、「顔」という要素に注目し、神や人、動物の顔を象った様々な資料をご覧いただきます。特に、日本各地の張子をはじめとする「面(めん)」を中心に、何かの顔を描いた、あるいは形作った玩具なども合わせて展示いたします。
●「面(めん)」を用いた祭礼や儀礼、演劇はそれぞれの文化に存在します。それは超自然的な存在を憑依させる容れ物であり、同時にそうした存在そのものでもあります。人は仮面を身につけることで、それが表すもの、時には人間以上の存在になれるのです。つまり、「面(めん)」は目に見えない世界、神や精霊といった超自然的な存在と交信するための手段の一つといえます。
●一方で、顔の造形=「面(つら)」そのものが魔除けなどの効果を持つこともあります。また、顔の一部あるいは全体を誇張したり簡略化したりすることで、笑いや娯楽の対象とされるものもあります。
●これらの「面(めん/つら)」は、人々の願いや信仰を背景に、それぞれの文化で育まれた想像力によって生み出されました。本展では、多種多様な顔を持つ民俗資料を通して、文化や歴史を凝縮した、その造形的魅力を紹介いたします。