あまりにも身近な存在で、また実用品であるためか、今まで灰皿に注意が払われることはあまりありませんでした。しかしひとたび、たばこ文化を豊かに彩る脇役として注目してみると、その造形やデザイン、あるいは材質の多様さなどに驚かされます。また、国内外の著名な工房や作家が制作した灰皿のなかには、実用品の域をはるかに超た美術工芸品ともいえる作品が数多くあります。
故土屋陽三郎氏が40年の歳月をかけて収集し、「世界のたばこ工芸館」で公開・展示されていた喫煙具コレクション約11,000点が1999年に当館の資料の仲間入りをしました。このコレクション誕生のきっかけとなったのは、ヨーロッパで土産用に買った2点の灰皿でしたが、その後収集された灰皿は約4,700点にのぼりました。
今回の展示では、この旧「世界のたばこ工芸館」の灰皿資料のなかから選りすぐりの約700点を展示し、灰皿の持つ隠れた魅力をご紹介します。