1960年代から現在まで、常に写真界の先頭を走り続けてきた篠山紀信が、このたび、そのカメラによって原美術館を《快楽の館》に変貌させます。
「ここ(=原美術館)で撮った写真をここに帰す(=展示する)」というアイデアのもと、出品作品はすべて当館で撮り下ろした新作で、およそ30名にものぼるモデルを起用したヌード写真です。
当館の建物は当初1938年に個人邸宅として建てられました。西洋モダニスム建築の手法を取り入れた、日本近代建築史の観点からも貴重な作例です。この場所は、写真家篠山紀信にとって、《撮る欲望》をかきたて《撮る快楽》に浸れる場であったということです。その結果、空間はヌードのための背景ではなく、身体と空間が織り上げる、濃密なイメージの世界としての《快楽の館》が生み出されたのです。実在の空間と展示された写真の中の空間が交錯し、紡ぎだす恥美で幻惑的な世界をぜひご覧ください。