絵画のジャンルと言えば、現在では「人物画」、「風景画」、「静物画」などが馴染み深いのではないでしょうか。そして英語でジャンル・ペインティングというと人々の暮らしの様を描いた「風俗画」を意味します。
西洋美術史をたどると、経済発展をとげた17世紀のオランダにおいては、豊かな市民がより身近で親しみの持てるテーマの絵画を購入するようになりました。18世紀後半にはヨーロッパ、特にフランスにおいて宗教や神話を描いた「歴史画」、「肖像画」、「風俗画」、「風景画」、「静物画」といったジャンルの区分を明確になっていきました。
近代以降の画家たち、そしてそれを鑑賞する現代の私たちにとって、絵画のジャンルとはどのようなものでしょうか。この度の展示では「風俗画」を出発点に、近代以降の絵画作品をモティーフ別にひも解きます。身近な暮らしの情景を描いた「風俗画」には、生活や人生に対する画家の視点が反映されます。同じように、身のまわりにある「静物」や「風景」に対しても、画家は描かれる対象に様々な関心を抱き、まなざしを注ぎ、これを描出します。そして、「画家である私」が制作をする場である「画家のアトリエ」は、絵画を描く主体である画家その人自身を表わすものでもあり、絵を描くとは何か、絵画とは何かという問いを我々になげかけてもいます。
現代の我々の視点から見えてくる、画家を魅了する光景を検証します。