わが国には土偶や埴輪、仏像や神像、人形、寺社を装飾する彫物、置物など、信仰や生活に結びついた豊かな造形表現があります。ところが明治以降、西洋の彫刻が知られると、それらが刺激となって立体造形に大きな変化がもたらされます。それでも江戸時代以前の造形感覚が忘れられたわけではありません。精巧な技術を駆使して本物そっくりを目指した木彫の栗や象牙の貝殻には、西洋美術における写実表現とは異なる意識がみられます。自然の風物を愛する日本人の感性は、根付け、水滴、香合など小さな立体に特によく表れています。一方で、現代のゆるキャラやマスコットにみられる形体の簡略化は、だるまや招き猫、各地で大切にされてきた民俗人形の造形と結びついています。本展ではジャンルを超えた多彩な立体表現によって日本固有の美意識を探ります。