“書”を主要なコレクションとする当館では、毎年様々な切り口で書の展覧会を開催しています。これまで現代書の動向を中心にご紹介してきましたが、今回はもう少し時代を遡り、近世から幕末、近代も含め、道南地域に残る書蹟によってその歩みをたどります。
近世では、松前章広(10代)や崇広(13代)など代々松前藩主の書から蝦夷地の文字文化がうかがわれ、北方の俳壇を拓いた松窓乙二、江差八勝を詠んだ頼三樹三郎や菊池九江など道南を訪ねた文人らの筆跡から、詩書に巧みな教養人の姿が浮かび上がります。
幕末から近代には、堀利煕や島義勇、榎本武揚や岩村通俊など外交や開拓を担った政治家や官僚の遺墨があり、激動期を生きた人々の息遣いを伝えています。また、日下部鳴鶴や巌谷一六、比田井天来などの書家の来道は、北海道の書の発展に大きな影響を与えました。
本展では、新しい時代の書を創出した現代書家・金子の誕生まで、松前・江差・函館をめぐる人と書のすがたをご紹介します。筆の勢、墨の香を楽しみながら、地域の歴史や文化を再発見してみてはいかがでしょうか。