万葉文化館は平成一三年に開館して以来、『万葉集』に詠まれた和歌をモチーフに当代一流の日本画家が制作した「万葉日本画」を、館蔵品の核として展示してきました。平成二七年度から平成二八年度にかけては、こうした万葉文化館の原点に立ち返り、「万葉日本画」全一五四点を、三期に分けて一挙に展示いたします。
第三期となる本展では、風景を主題とした作品を展示します。『万葉集』には、九州から東北にいたるまで様々な地域で詠まれた歌が収められており、また月や滝、山などの景物も多く詠まれています。そのため、「万葉日本画」の中にもいわゆる「風景画」は多く存在しています。風景を描いた絵は古来数多くありますが、描かれた風景は、多くの場合、単なる土地の記録ではなく、詩情を喚起し、作り手の内面を投影する特別な場でもありました。「万葉日本画」に描かれた風景においてもそれは同様です。画家が『万葉集』を読み込み、想いを込めて描いた「万葉日本画」の風景をお楽しみいただければ幸いです。