本年は、井原市ゆかりの日本画家・森六峰(1879~1946)の没後70年にあたります。それを記念し、井原市立田中美術館では「没後70年 森六峰 清雅なる山水画―京(みやこ)の日本画とともに」を開催いたします。
森六峰は、岡山県後月郡芳井町(現 井原市芳井町)に生まれ、後に森家の養子となりました。精研高等小学校を終えたのち、同郷の南画家・河合栗邨について画技を学びます。明治30年、京都に出て南画界の最後の巨人・田能村直入の門下となりました。六峰は直入の邸である「画神堂」内に住み、師が各地の景勝を訪ねる際に同行を許されるなど、直入の薫陶を受けてさらに画技を磨きます。
しかし、明治40年(1907)に直入が没し、一時的に帰郷することとなります。東京に住んだ時期もありますが、明治43年(1910)以後は故郷に居を定め、地元有志による画会を開きます。
六峰の魅力は、その清雅な山水画世界にあります。師譲りの優れた画技とともに、詩文の深い理解が画面内にあふれ、高い画格を示しています。六峰は東アジアにおける伝統的な絵画観「詩書画三絶」に立脚しており、近代岡山画壇、そして京都画壇の双方において、自己の画境を確立した本格的な南画家といえるでしょう。
本展では、森六峰の作品を中心に、交流のあった画家たち、さらに六峰が蒐集した近世絵画を初めて紹介します。また、六峰が活躍した同時代京都の日本画家たちの作品もあわせて展示し、六峰の画業をたどる試みとします。