古川美術館開館25周年記念展として、日本美の結晶とも言える華やかな花鳥画を、上村松篁、前田青邨、堀文子、平松礼二ら近現代の日本画を中心に所蔵品からご紹介します。多彩な四季の移ろいをみせる日本では、花見、紅葉狩と折々の花の開花に心躍らせ、そこに遊ぶ鳥は季節の訪れを告げる使者として、人々はそのさえずりに耳を澄ませてきました。
美術の世界でも、古くから花や鳥を描き愛でる文化が定着し、花鳥は自然美の象徴として、時には願いを託した吉祥モチーフとして親しまれてきました。花と鳥に代表される花鳥画には、草木や虫魚、動物といった生物も含まれます。日本人は小さな生物の息遣いや名もない草花の揺らめきにも温かなまなざしを送り、心を寄せてきました。本来季節の異なる春夏秋冬の花鳥が集う四季花鳥図のように、華麗な作品が好まれた一方で、雪月花のような叙情的な題材もまた広く愛されてきました。
本展では、名古屋大学博物館の協力の元、展示作品に描かれた花や鳥の実物写真をその特徴と共にご紹介します。バードウォッチングや花見に出かけるような気分で、自然の中に花鳥を発見した時の画家の感動に思いを馳せながら、美術作品をお楽しみいただければ幸いです。