公益財団法人常陽藝文センターでは郷土作家展シリーズ第241回として、「練上―色の共鳴 松井康陽展」を開催いたします。
練上は陶芸の中でも非常に特殊な技法です。緻密な計算と手間のかかる作業を必要とし、多作が難しい練上技法を用いる陶芸家は多くありません。
陶芸家・松井康陽さんは、練上技法で重要無形文化財保持者(人間国宝)となった亡父の松井康成を師に学びました。幼い頃から住職業と陶芸の両立に邁進する父の姿を見て育ち、そのあとを継ぐことを当然と考えていたといいます。筑波大学卒業後、空前の陶芸ブームで多忙を極めていた父の陶房に入り、手伝いをしながら自身の作品も制作するようになりました。
松井さんは植物文様から幾何学的な文様まで、さまざまな意匠を練上で表現し、制作のたびに出てくる課題に取り組みながら、練上技法の可能性を広げています。近年ではシンプルながら亀裂が長く入りやすいために技法的に困難な線文に成功し、清冽なグラデーションの作品で高い評価を得ています。
ミリ単位で文様を構成し、狂いのでないように工程を計算する練上ですが、それでもなお加わる制作過程での変化を、松井さんは「自然の無作為」と呼びます。計算され尽くした技法と陶芸ならではの変化があいまって、整っているだけではない自然の美しさが作品に現れます。
今展では初期から近作までの制作の変遷を辿る優品22点を、二期に分けて展示します。
公益財団法人 常陽藝文センター