彫刻家・川島清(1951- )。木、鉄、鉛といった素材を用い、四元素(火、水、土、空気)を根底とする身体を通した独自の思考を掘り下げ、国内外での発表を重ね、日本を代表する彫刻家の一人として活躍しています。
川島は、物質の奥底に潜む本質を探究し、身体をとおして紡ぎだした特有の言葉が現れます。下方に立ち止まりその視点によって開示する多義的な作品は、日常に隠れているものを影のように覆っているのです。見えないものへの眼差し、失われたものに向き合う姿勢、断片をつながりのひとつの断片とするのではなく、断片を断片とする考察。川島は独自の歩みでそれらを織り編み彫刻として引き継いだのです。
これまでに川島は層に創り、積み重ねる《observation》シリーズなどを展開してきました。本展は新作を含め2005年以降の作品に焦点を絞り、大規模な作品である《水量》、《路傍ノート》シリーズを中心に、20余点の作品群で構成されます。創出される濃密な彫刻空間を前に、深遠な黙示がそれぞれの知覚に響く体験となります。
「…知れない不規則な断続する組み合わせの生と滅が、はかり知れない漠には閾はないようなものの閾と感じられるあたりに、呪術の巣が秘められている。水草には直感が育くむ思考の煮つめが存在する。」(― 川島清<水量Ⅶ>より抜粋)