世界で最も注目されるアーティストのひとりヒュー・スコット=ダグラス(1988年英国ケンブリッジ生まれ、米国ニューヨーク在住)の最新作を中心とした展覧会を美術館フルスケールで開催します。
スコット=ダグラスは、絵画の誕生からグーテンベルクの印刷術の発明を経て今日にいたる画像の可能性を探求しながら、画像とは何か、その価値とは何かを探究するアーティストです。
本展では、2つの異なる作品シリーズを通して、生産物の過剰性と機械的な生産方法を対比させながら、今日のニューメディアの中で透過性のある画像が生み出される構造が示されます。
歴史的な画像の顕れを振り返る1つ目のシリーズは、2012年から2013年にかけて構想されたもので、今日ではレトロな35mmスライドで上映されます。このシリーズの為にスコット=ダグラスは倒産寸前の映画館から35mm映画の予告編映像アーカイブを買い取りました。
これらの予告編フィルムは二段階に抽象化され、写真の古典技法であるサイアノタイプ(「青写真」の意)と融合して全く新たなスライド画像となります。
2つ目のシリーズでは、流通、生産、消費、廃棄のシステムが常に変容し続けながらレイヤー化される画像世界の意義とその可能性を更に発展させ、スコット=ダグラスは「写真油絵」という歴史的な技法の深化を試みます。「写真油絵」とは高橋由一との共作で知られる写真のパイオニア横山松三郎が開発した技法です。
この幕末維新期の写真技法とカメラ代わりに駆使した今日の3Dスキャナーによって情緒を排して客観化された画像は、運送用のダネージバッグという透過性のある袋と重層化され、新たな作品へと変貌します。
画像の手仕事化と機械化という2つの方法を複雑に交差させたヒュー・スコット=ダグラスの最新作を世界に先駆けて展観します。