没後30年が過ぎ、全国4会場で回顧展が開催されたことは記憶に新しいところです。そこには20代、30代と思われる若者が多く見受けられました。将来に対する不安が多い現代、若者たちは自己をどう表現するべきか迷っているのかもしれません。
鴨居玲(1928-1985)は内面に宿る本当の自己をカンヴァス上に表現しようとしました。鴨居の描く自画像は、まるで死と対峙するかのような面持ちで、苦しく寂しそうに「これが私なのだ」と見る者に訴えかけます。
このたびの展覧会では、鴨居作品を多く所蔵する石川県立美術館の協力をいただき、初期作品から円熟のパリ・スペイン時代、帰国後神戸での裸婦・自画像の時代を通し、アトリエに残された絶筆の自画像まで、油彩・水彩・素描などを含め約100点を展示します。加えて習作のデッサン、書簡、愛用品など、鴨居を知る上で貴重な資料類も数多く公開し、鴨居の人物像に迫ります。