都内ではじめての伊豆 (いず) の長八 (ちょうはち) 展!
伊豆の長八(本名:入江長八 1815-1889)は、幕末明治前期の江戸/東京で活躍した伊豆・松崎出身の左官です。漆喰 (しっくい) 壁に鏝 (こて) を使った浮彫と彩色を施した装飾は「鏝絵 (こてえ)」と呼ばれ、長八はその随一の技をもって建築・調度・塗額などの上に傑作をつくり上げていきました。長八の鏝絵は「前代未聞」といわれ、浅草における見世物や、明治10年の第1回内国勧業博覧会でも衆目を集めます。
しかし、つげ義春がマンガ「長八の宿」(『ガロ』1968年1月号)に描いたように、故郷・松崎周辺では長八作品の保存が進められてきた一方、彼が躍動した江戸/東京の町からは、かつて存在したはずの数々の鏝絵や漆喰細工とともに長八の記憶の多くが失われていきました。
長八生誕200年を記念し、松崎を中心とする静岡県内や関東近郊の寺院・個人宅に伝えられた貴重な鏝絵や漆喰細工約50点が集まる本展は、長八の超絶的な鏝さばきとユーモラスな発想に投げかけられた人々の驚きと笑いが、ここ東京において、再び呼びおこされる機会となることでしょう。
鏝絵のほか、長八の卓越した画技を知らしめる絵画作品、独特のリアリズムから生み出された異彩を放つ塑像類も注目の展示品です。
初公開となるものも含め、長八作品がこれだけ集結するのは今回がはじめて。生真面目さとあやしさを併せ持つ長八の世界を、存分にお楽しみください。