1980年代から絵画の可能性について様々な試みを追求している津山市出身で関西を代表する画家の一人である山部泰司の本格的な回顧展を開催します。山部は近年、名画の中に描かれた樹木や森、水などを引用していくことで、様々な時間の流れが混在する重層的な風景画に取り組み、発表しています。「さまざまな条件によって変成する風景画は、見るものと見られるものとの相互的な編集過程であり、動態として新たな関係性が生まれる絵画を構想している。」と山部が述べているように、深い森とその森を侵食していく水や滝などが描かれ、それぞれの大きさが部分ごとに異なり、複数の景色が無数に重なりあっている情景の絵画は、記憶と現実、現在と過去など対立する要素を内包させながらも、とらえきれない無限の地平を模索しているといえるでしょう。約7年ぶりになる奈義MOCAでの個展は、進化をし続ける「山部芸術」の真髄をご堪能いただけるでしょう。