タイトル等
木下佳通代展
「存在に対するメッセージ」から「存在そのものの創造」へ
会場
Gallery:Shimada deux
会期
2016-02-20~2016-03-02
開催時間
12:00~19:00
*火曜日は18:00、最終日は17:00まで。
協賛・協力等
●協力:ユミコ チバ アソシエイツ
概要
木下佳通代展を2年振りに開催いたします。今回は前回の木下佳通代展(2014.1/25―2/5)をきっかけに、その作品の魅力にとりつかれ、木下佳通代の学術的な研究を本格的に始めておられる、森下明彦氏に企画・構成をしていただくことになりました。



美術家の長年の歩みを辿っていく場合、とりわけ興味深いのが作風が変化する時期です。木下佳通代に関しては、それは1980年前後です。明瞭なのは写真からパステルを経て、油絵へと表現手段が変わっていったことでしょう。その裏には、彼女の内での表現に関わる考えの発展があったと推測されます。
木下佳通代がしばしば用いた言葉に「存在」があります。この言葉に込められた思考は思いのほか深いのですが、ここではあらゆる事物や現象としての森羅万象と理解しておきましょう。
「存在」は、見る(認識する)ことと密接な関係にあります。1970年代後半に試みられた写真を用いた仕事は、この点を掘り下げようとしたと要約出来ます。写真は「存在」を客観的に捉えるとともに、「見る」ことや認識そのものをも批判的に検証し得る方法であったわけです。
その後、印画紙の表面にペンで線を引いたり、アクリル絵具を塗布することを経過して、1970年代末ごろには写真を使わない仕事が出現します。紙を折り曲げてドローイングを行い、拡げる、あるいはキャンバスに塗った絵具を拭き取るようにする―こうした試みを続けながら、新たな絵画の生成へと進んでいきました。
「存在」と言うものを美術に即して考えるなら、線や形、色や質感、絵筆の動きなどとなります。外観や手段の変遷にも拘らず、一貫して流れている木下佳通代の志向は、こうしたさまざまな要素を皆対等にすることであったと考えられます。写真に関して補足するなら、次元を異にするメタ写真(写真の写真)や表面上のペン書きの線が、写真のイメージと等価と看做されているのです。それらが集結し、出会う場所こそ、絵画(あるいは、写真)の二次元の平面なのです。
最晩年のあるインタヴューにおいて、木下佳通代は上記の過渡に関して、「存在に対するメッセージを送るのではなく、存在そのものを創り出す」ことへと変わっていったと話しています(カタログ「木下佳通代 1939-1994」〔株式会社AD&A/1996年])。そして同じインタヴューから拾えば、究極的に目差されていたのは「空間の緊張感」に支えられた、「言葉を越えて存在を感じさせる表現」でありました。本展の企画趣旨はこれらの発言に基づいたものです。1980年頃を中心として、その前後のやや長い時期における彼女の仕事を俯瞰してみたいと考えます。
木下佳通代が没してから20年以上の時が過ぎましたが、その仕事の本格的な位置付けと評価については残念ながら今後の課題として残されたままです。本展は小規模ですが、そのための準備作業になればと願っています。
さらに付言するなら、この展覧会に出品される作品の多くは作家の没後、ご家族が困難な状況の中で保管されてきたものです。このこと自体が、未だ「美術」というものが真に社会に根付いていないこの国の状況に対する批判的な行動となっているように思われます。そうした作品群の将来を何とか安泰にしたいという想いからも、本展が企画されたことを付記しておきます。

森下明彦 (メディア・アーティスト/美術・音楽・パノラマ愛好家)
イベント情報
サロントーク
「木下佳通代の仕事を改めて振り返る」
2月20日(土) 17:00~ ギャラリー島田にて
[無料・要予約]
講師:森下明彦 (本展企画・構成担当)
ホームページ
http://gallery-shimada.com/?p=3545
会場住所
〒650-0003
兵庫県神戸市中央区山本通2-4-24 リランズゲート1F
交通案内
JR・阪急三宮駅より徒歩約15分
ホームページ
https://www.gallery-shimada.com
兵庫県神戸市中央区山本通2-4-24 リランズゲート1F
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