葉祥明は創作絵本以外に、挿絵作家としても多くの作品を手掛けています。『星の王子さま』(アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ)や『やまなし』(宮沢賢治)など名作にも絵を添えています。1670年頃に生まれた「ひろいかわのきしべ」の原題は『The Water Is Wide (O Waly, Waly)』、諸説ありますがスコットランド民謡と言われています。NHK連続テレビ小説「花子とアン」「マッサン」の主人公が口ずさんだ歌が希望と勇気を与えてくれるとして、広く知られることになりました。かねてよりお付き合いのあった八木倫明氏が和訳をされたご縁で、葉祥明が絵本「ひろいかわのきしべ」の絵を描きおろす事になります。数百年歌い継がれてきた民謡に、哀愁を帯びた灰色の色調を中心に描かれた作品は、メルヘン画で知られる葉祥明とはひと味違う側面を見せています。一見、寂しく暗い絵に感じられるその世界をよく見ると、「希望」という一筋の光が見えてくる。そんな空気を感じるこの作品には『描かれた世界の向こうに、見る人が美しく明るい透明な世界を見通して欲しい』と作家の思いが込められています。葉祥明の描く、歴史ある民謡の世界をご堪能下さい。