2人組のアーティストである、山下麻衣+小林直人は、「芝生の上を毎日走って∞を出現させる」、「砂浜から1本のスプーンを作る」といったような、大人の好奇心と遊び心に満ちた、一見不可能に思われる事柄を、実際に実行し、そのプロセスを映像とオブジェ等を組み合わせたインスタレーションで見せる作品で知られています。本展は、デビューとほぼ時を同じくして、ドイツをはじめ、スイスやアメリカ等の海外を拠点に活動をしてきた、山下+小林の国内初となる待望の美術館での個展となり、2人のこれまでの活動の全てを回顧展的ではない形でありながらも、ある意味、網羅する展示となります。
展示のメインとなる作品は、アイディアスケッチに使っていたノートの表紙を絵に描き起こした絵画の新作です。アイディアを具現化したこれまでの作品とこれから制作される作品をもすべて構造の中に取り入れるメタ作品は、あらゆる複雑性を誘発します。この作品は、山下+小林を媒介に想像する楽しさを追体験していた鑑賞者にとって、想像するという無限の可能性の行為の主体へと開かれた入り口でもあります。
最終章かのようなメタ作品は、山下+小林にとって、新たな領域に踏み込んだ次章に過ぎません。今後の山下+小林の活動を見る上でも、見逃すことができない展覧会です。どうぞご期待下さい。