デザインとは何か。その定義は残念ながら曖昧である。あるデザイナーの天才的な思いつきか、あるいは見た目が格好良くできているものか。どちらも否である。デザインは、実証科学(サイエンス)である。デザイナーは仕事を受けると、そこにある根源の問題を見つけ出す。その問題を解決しうる仮説を立て、検証を重ね、結論を導く。失敗してはこの過程をくり返し、アウトプットにつなげるのがデザインという作業なのである。自分が生きてきた全ての体験と圧倒的な基礎力で挑む。あえて言うならば、装飾的な美しさは副産物。むしろデザインがそこに存在することに気づかないほどスムーズな状態こそ、『デザイン』である。世の中にもっと正しいデザイン(ソリューション)を。デザインは、いまや特別な環境やそれを好む人だけが手にするものではなく、あまねく供給されるべきライフラインのようなものだ。D&ADは、世界のデザインを評価するアワードである。常にデザインの在り方を問い、クリエーティブ界に多大な影響を与えてきた。1963年創設当初は、ジャーナリズムの力が強く、報道写真やマガジンに多くの賞が与えられた。それらのデザインは「社会を見る視点」を提供した。70年、80年代はCMなどの広告が、90年代はあのパソコンが受賞し、デザインは「ブランド哲学を語るもの」という新たな指針を示した。その視点は、マクロでは世界情勢を、ミクロには人の心の動きを深く洞察している。2015年の日本において、デザインの本質を見逃す手はない。
デザインが無ければ、人は生きられない。