吉原治良(1905-1972、大阪生まれ)は、戦前は抽象絵画の先駆者の一人として、また戦後は芦屋に生まれた具体美術協会の代表として、長きにわたり前衛芸術運動をリードする重要な役割を果たしました。芦屋市立美術博物館では開館以来、この吉原を芦屋ゆかりの作家の中でも特に中核的な存在として捉え、継続的な作品・資料の収集、調査研究に取り組んでいます。没後20年にあたる1992年には、その画業を顧みる大規模な展覧会を開催し、以後も折に触れてテーマを設け、作品の展観を行ってきました。
回顧展から10年を経て、今年は没後30年という節目にあたります。これを機に本展では吉原を改めて取り上げ、その作品や活動の意義を、今までにない多元的な視点で明らかにすることを目指します。今回は、これまで吉原作品について研究発表されている3人の研究者をゲストキュレイターに迎え、当館キュレイターと併せて6人がそれぞれテーマを設定して、主に当館所蔵および寄託品より出品作品・資料を選び、会場構成を行います。このように複数の視点が交差するなかで重層的な解釈の可能性が生まれ、新たな吉原像が浮かび上がってくることを期待します。